印刷したら色が違う?~データと同じ色にならないのはなぜ?~
今回は、はじめて印刷を行う方やノンデザイナー、発注担当者に向けて、印刷の色味についてお話させていただきます。
ネット入稿での印刷が主流になってきた昨今、印刷データが用意できれば誰でも手軽に印刷物の注文ができるようになりました。
しかし注文が手軽になったからと言っても、印刷そのものが簡単になったわけではありません。
いざデータを作って入稿してみたら「想像してた色と違う」なんて経験もあるのではないでしょうか。
色が違って見えるのにはきちんとした理由があります。コツがわかればイメージと印刷の色味を近づけられるようになります。
本ブログでは3回にわけて『データ作成環境による色の見え方の違い』『印刷機器・用紙による仕上がりの違い』
『厳密に色をあわせたい場合の印刷方法』についてご紹介させていただきます。
目次
- 第1回:色の見え方の違いについて
- 01.データと印刷の色が違う?
- 02.CMYKとRGB
- 03.色の見え方について
- 04.CMYKとRGBの『混色表現』の違い
- 05.CMYKとRGBの『表現色域』の違い
- 06.モニター設定や作業環境の光による色の見え方の違い
01.データと印刷の色が違う?
冒頭でも記載いたしましたが、ポスターやポストカード、チラシなどの印刷を頼んだ際に
『データよりも仕上がりが暗く感じる』『印刷会社によって色味が違う』『以前と同じデータなのに色がズレている』
なんて経験はお持ちでしょうか。あるいは、これから経験することがあるかと思います。
その際に『データを作る時にちゃんと調整しているから、これは印刷不良に違いない』と結論付けるのは早計かもしれません。
なぜならデータを確認するときにモニターに表示されている色と、印刷物の色では『見え方が異なる』からです。
02.CMYKとRGB
世の中にあふれる無数の色は、ベースとなる3色の混色で広範囲にわたり再現することができます。
このベースの3色を三原色と言い、テレビや写真、印刷などはすべて三原色の混色による色再現システムで成り立っています。
三原色には『CMYK』と『RGB』の2種類があり、データを作成するアプリケーションにもそれぞれのカラーモードがあります。
一般的に印刷所では『CMYK』カラーでのデータ作成をお願いしています。
『CMYK』と『RGB』ではベースとなる三原色、混色の方法が異なるため、『RGB』カラーで作成したデータを
『CMYK』で印刷すると、色が暗く、くすんでしまいイメージと異なる仕上がりになってしまいます。
03.色の見え方について
日常生活の中で、色がどうやって目に届いているかを意識することは少ないと思いますが、色には見え方が2種類あります。
『光がモノに当たって反射して見える色』と『光がモノを通過して見える色』です。
『反射による色(CMYK)』は、太陽や電気などの光がモノに当たって反射した色のことで、印刷物はこちらに該当します。
スマートフォンやテレビの画面で見える色は、モニターを『通過した色(RGB)』になります。
モニターにはバックライトが入っており、光によって色を作り出しています。対して、印刷物は光で反射したインクによる色です。
インク自体は発光して色を変化させたり、作るといったことはできません。
このように色の表現方法が異なるため、印刷物と画面では見える色味が変化します。
04.CMYKとRGBの『混色表現』の違い
印刷による色は『青・赤・黄』をベースに、それぞれの色を混ぜて、白以外の色を表現します。
色を混ぜるほど明度が下がり、すべての色を混ぜると黒に近づいていきます。これを『減法混合』と言います。
印刷を行う際は『青(シアン)・赤(マゼンタ)・黄(イエロー)』に『黒(ブラック)』を足した『CMYK』で色を表現します。
光による色は『Red(赤)・Green(緑)・Bule(青)』をベースに、それぞれの色を混ぜて黒以外の色を作ることができます。
モニターは電源を切った状態だと真っ暗になります。光っていない状態=黒です。
これを『加法混合』と言い、減法混合とは逆に色を混ぜるほど明度が上がっていき、すべての色を混ぜると白になります。
05.CMYKとRGBの『表現色域』の違い
表現できる色の幅(表現色域)は『RGB>CMYK』となり
RGBカラーでは作ることができても、印刷(CMYK)では表現できない色も存在します。
印刷で表現することができない色のデータがある場合は、印刷機側で自動的に近似色(CMYK)に置き換えて出力されます。
そのためRGBデータをそのまま印刷すると、全体的に色味がくすんだような仕上がりになってしまいます。
CMYKのカラーモードでデータを作った場合でも、画面上で見えている色はRGBで表示されたものを認識しています。
印刷物とデータでは、そもそも色の作り方(表現方法)が異なるため、データと印刷物を見比べても
色味がまったく同じになることはありません。この認識の違いがデータと、実際に印刷された色味が合わない原因の1つになります。
06.モニター設定や作業環境の光による色の見え方の違い
スマートフォンなどで夜間モードを使用すると、画面が少し黄色みがかって目に優しい色合いになります。
夜間モードではブルーライトを軽減し、表示される色を暖色に近づけるため、実際の色味とは異なる色合いで表示されます。
同じように、使用しているパソコンモニターの明るさや反射による映り込み、画面の調整などによって表示される色に差がでます。
また、色を確認する場所(野外、窓際、自然光のない室内)や照明の種類などによっても、見える色が異なります。
色味の確認に適した場所
展示会などで使用するポスターを作成する時、室内と屋外のどちらでポスターを掲示するかによって色の調整が異なります。
屋外展示用に作成したポスターを室内で確認すると、赤みが強く感じられるかもしれません。
試しに印刷したものを使用目的にあった光源の下で見ると、イメージしている色味に近いかどうか確認することができます。
モニターの発色調整
出荷された初期状態のモニターや、長年使用しているモニターは経年劣化によって正しい発色で表示されていない場合があります。
データ作成をしている画面の色が正しくなければ当然、印刷物にも影響がでてしまいます。
モニターやプリンターなど、色を入出力する機械には、キャリブレーションというデバイスを調整する方法があります。
やり方はいくつかありますが、可能であればまずはモニター自体の『ディスプレイ設定』から色味の出力を調整しましょう。
使用しているモニターの種類によって、操作手順が異なるため詳しくは各メーカーへお問い合わせください。
・キャリブレーションを行う場合は、初期設定をスクリーンショットなどで控えておくことをおすすめします。
・通電直後は発色が落ち着いていないため、電源を入れてから30分以上時間をおいて調整することをおすすめします。
モニターの色温度を指定できる場合は『6500K』前後、ガンマ値の設定を『2.2』にすると一般的なパソコン画面に近づきます。
社団法人日本印刷学会の推奨する、印刷の色評価時の規格(1998年改正)における色温度は『5000K』前後とされていますが
色評価時に使用されていた蛍光灯の国内生産中止に伴い、LED光源下における色評価ガイドラインの作成改定が進められています。
画面の輝度(明るさ)によって色味が変化してしまうため、キャリブレーションを行ったあとで変更しないよう注意してください。
これでモニターの調整は完了になります。さらに細かく調整を行いたい方は『モニターキャリブレーション』でお調べください。
次回は『以前と同じデータなのに色が違うのはなぜ?』について紹介させていただきます。