【デザイン用語集】コンペティション
デザイン業界における「コンペティション」とは?
コンペティション(コンペ)とは
デザイン業界においてよく耳にする「コンペティション(Competition)」とは、「競争」「競技会」を意味します。
コンペとは、複数の企業やデザイナー、制作会社から提案を募り、その中から最も優れたデザインを選ぶ仕組みのことです。
グラフィック、映像、インテリア、プロダクト、広告ビジュアル、Webサイトなど、幅広いジャンルで採用されており、
企業や団体にとっては「より良いアイデアを得る手段」としても重宝されています。
「新国立競技場のデザインコンペ」や「五輪のエンブレム」もデザインコンペという形で決まりました。
企業や自治体・公共団体が開催するケースが多く、規模や要項も様々です。
コンペティションの基本的な流れ
コンペティションの一般的な進め方は次の通りです。
①募集要項の提示
クライアントが「デザイン募集」として案件を公開。テーマや目的、予算、納期、ターゲット層、条件などが明示されます。
②デザイナーによる制作
募集要項に基づき、参加デザイナーがアイデアを形にします。
③提案・提出
制作したデザイン案を提出。場合によってはプレゼンテーションが行われることもあります。
④選定・採用
クライアントが比較・検討し、最も適したデザインを採用します。
この流れを通じて、依頼主は複数の視点や発想を得られるため、単発の依頼よりも幅広い選択肢を確保できます。
コンペティションを利用するメリット
コンペティションは、主催するクライアントにも、参加するデザイナーにも、それぞれにメリットがあります。
クライアントにとってのメリット
複数の提案を比較できる
テーマや目的に対して、異なるアプローチから検討することができます。
多様な発想を得られる
様々なデザイナーが応募する場なので、個人に依頼するよりも、新しい視点や独自性のある案が集まりやすい傾向にあります。
デザイナーの力量を見極めやすい
実際に制作された作品を比較することで、クオリティや表現力を判断することができます。
デザイナー側にとってのコンペティションは、経験や実績を残せるチャンスとなります。
多くの参加者がいるなかでアイデアや作品を評価される貴重な機会でもあり、
自身の実力や強み・弱みを見つけスキルアップに繋げることができます。
デザイナーにとってのメリット
実績づくりにつながる
採用されれば、デザインや制作などの実務的な成果をポートフォリオに追加することができます。
コンペによっては、採用されたデザインがそのまま商品化されることもあります。
自由な発想で挑戦できる
クライアントから直接依頼を受けるよりも、比較的自由なアイデアを試せる場になることが多いようです。
新しい取引先獲得のきっかけ
採用されればその後の継続案件や、別のデザイン依頼につながる可能性もあります。
コンペティションのデメリット
デザイン業界における「コンペティション」は、クライアントにとっては多彩なアイデアを得られる仕組みであり、
デザイナーにとってはスキルや発想力を試すチャンスです。
一方で、コンペにはデザイナー・クライアント双方に注意すべき点もあります。
デザイナー側のデメリット
報酬が発生しないリスク
入賞しなければ報酬が得られないケースも多く、無償で時間や労力をかけることになる可能性があります。
賞金を重視したい場合は、応募の前に要項をよく確認しましょう。
時間的コストの大きさ
上記のように、入賞しないと賞金が出ない場合も多いので、制作にあたり相応の負担が発生します。
アイデア流用の不安
採用されなかった案が流用されるトラブルが起こることもあります。
応募したアイデアや制作物の権利がどこに帰属するのか、こちらも条件をよく確認しましょう。
クライアント側のデメリット
選定コストがかかる
多数の応募作品を比較検討するため、多大な時間やリソースが必要です。
クオリティのばらつき
コンペの内容にもよりますが、プロやアマチュア問わず様々な人が応募するため、
提出物のクオリティには個人差があり、選定作業が煩雑になる場合があります。
コンペ参加時に気をつけたいこと
自身の力量を試すのに、コンペティションに挑戦してみるのは大きな経験になります。
コンペに参加するときは、後にトラブルを発生させないためにも、
事前に情報をよく調べ確認し、自分に合ったコンペに応募しましょう。
募集要項の確認
報酬の有無や納期、権利の帰属や契約内容、現地への参加が可能かなど、コンペによって条件は異なります。
まずは募集要項と応募条件をしっかりチェックしましょう。
依頼主の信頼性を調べる
過去に開催されたコンペの実績や、採用後の対応がきちんとしているかを確認しましょう。
得意分野に絞って参加する
ひとくちにデザインといっても、グラフィック、映像、ウェブ、インテリア、プロダクトなどジャンルやテーマは様々です。
自分のスキルが活かせる分野、得意な分野か、挑戦してみたい分野を選びましょう。
時間配分を意識する
条件によっては複数のコンペに同時に応募することも可能ですが、
採用の有無が不確実なため、期間をよく確認し、過度な時間やリソースの使い方は避け、効率的に取り組みましょう。
コンペを主催するクライアント側になる場合は、以下の点にも抑えておいた方がよいでしょう。
著作権や利用規約の明確化
提出された案の権利をどう扱うのかをあらかじめルール化しておくことが必要です。
公平な評価体制
応募者が納得できる透明性の高い審査方法を設けることが信頼につながります。
おわりに
いかがでしたでしょうか?
まとめると、クライアントにとっては多彩なアイデアを集められる有効な手段、
デザイナーにとってはスキルを試し、実績を積める機会となるのが、
デザイン業界の「コンペティション」と言えるでしょう。
貴重な機会である一方で、報酬の不確実性や著作権のリスクなど課題も多く、
双方がルールを明確にした上で参加・開催することが求められます。
現在開催中のコンペや過去の作品を見ることができる、コンペの情報サイトも多数展開されています。
プロだけでなく、学生やアマチュア向けのコンペもたくさん開催されているので、
これからデザインやロゴの依頼を考えている企業様、あるいはデザイナーとして挑戦してみたい方は、
参考にしてみてはいかがでしょうか。